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医療コラム

コラム 2025.05.19

胚発生と亜鉛の関係

亜鉛は私たちの体にとって欠かせないミネラル(微量元素)です。

亜鉛の不足は精液所見の不良化や排卵障害、着床不全など、男女ともに不妊原因に繋がる恐れがあります。

 

今回はそのような亜鉛について、

培養に使用する物品から溶け出す亜鉛が胚発生に与える影響について調べた論文を紹介します。

 

Zinc eluted from glassware is a risk factor for embryo development in human and animal assisted reproduction

Tatsuma Yao, et.al. Biology of Reproduction (2025)

 

この論文では、

・ガラス製品がどのくらい胚発生に影響を与えるのか

・影響を与える物質(胚毒性物質)の特定

・マウス、ウシ、ヒト胚への影響

を検討しています。

 

ここでは胚毒性物質が 亜鉛(Zn) であると特定した以降のマウス胚での検討を紹介していきます。

  • Znの添加実験
  • 拮抗剤の検討

 

  • Znの添加実験

さまざまな濃度のZnを添加した培養液で受精卵を培養し、見た目の変化(培養成績)と目には見えない変化(分子レベルの変化や遺伝子発現など)を調べています。

【結果】・Znの添加濃度が高くなるにつれて、胚盤胞到達率が低下した

・染色体の分離などに影響

・遺伝子発現の変化がみられた

 

  • 拮抗剤の検討

Zn2+などの金属イオンは胚発生を止めてしまうため、培養液にはもともと金属イオンと反応して効果を打ち消す拮抗剤(キレート剤)が含まれています。

この検討ではその添加濃度が十分ではないと考え、キレート剤の添加濃度を増やして実験を行いました。

【結果】・キレート剤の濃度が高くなると胚盤胞到達率は改善した

(Znを添加していない群と同等の成績になった)

・キレート剤濃度が高い培養液で培養した胚盤胞を移植後、

生産率は低下、生まれた仔の出生体重が増加した

 

 

以上の結果から私たちができることは、Znが溶け出すのをできるだけ防ぐことです。

 

培養に用いるガラス製品は、卵子/受精卵を入れる培養dish、卵子/受精卵を操作するためのピペットが主になります。

当院で採用している培養dishはプラスチック製のものなのでZnが溶け出す可能性はほとんどございません。

ピペットについては利便性の観点からガラス製品を採用しておりますが、できるだけ卵子や受精卵を扱う時間は短く、必要最低限になるようにしているので、ガラス製品と触れる時間は短時間です。

全く触れずにというのは難しいですが、Znの影響は受けにくい安全な環境であると思います。

 

普段摂取している亜鉛が直接卵子や受精卵に影響するわけではないのでご安心ください。

ただ過剰摂取はからだの他のところにも影響しますので、サプリ等使用する場合は用法容量を守ってご使用いただければと思います。

 

私たちはいつも新たな研究報告をこまめに確認し、安全性を向上していくように努めております。

大切な受精卵を見えないところに預けるのは不安かと思いますが、どうかご安心いただければと思います。

 


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