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医療コラム

学会報告 2025.05.28

ICSI低受精症例における卵子活性化の有効性の検討

2025年4月26日から29日にかけて東京国際フォーラムで開催された「国際生殖医学会2025(IFFS 2025)」に参加し、ポスターで「ICSI低受精症例における卵子活性化の有効性の検討」を発表いたしました。今回はその内容についてご紹介いたします。

 

顕微授精(ICSI)において、全受精障害は約1〜3%の頻度で発生すると報告されており、その主な原因の一つとして卵子の活性化障害が挙げられます。この問題に対応するため、人為的卵子活性化(Assisted Oocyte Activation:AOA)技術が導入されています。AOAでは、カルシウムイオノフォア(Ca)や塩化ストロンチウム(Sr)を用いて卵子の活性化を促進し、受精率の向上を図ります。

 

本研究では以下の2点を目的としました。

・ICSIにおいて低受精率を示した症例に対し、CaおよびSrによるAOAの効果を比較検討すること。

・CaによるAOAで受精率が改善しなかった症例において、Srが有効かどうかを評価すること。

 

【方法】

検討1 : 同一周期内に複数の成熟卵子を回収し、Ca群およびSr群に分けてAOAを実施した症例のうち、AOA未施行の前周期における受精率が50%未満であった症例を対象としました。比較対象として、同一症例における前周期(AOA未実施)をコントロール群としました。

 

検討2 : CaによるAOAを実施後も受精率が50%未満であった症例において、次周期にSrによるAOAを実施した症例を対象とし、両者を比較しました。

 

評価項目は、受精率、胚盤胞到達率、妊娠率、および出生率としました。

 

【結果】

検討1:Ca群およびSr群はいずれも、コントロール群と比較して受精率が有意に改善しましたが、Ca群とSr群の間に有意な差は認められませんでした(図1)。胚盤胞到達率については3群間で有意な差は認められませんでした(図1)。妊娠率および出生率はCa群・Sr群で改善がみられましたが、両群間で有意差は認められませんでした(図2)。

検討2:CaによるAOAで効果が認められなかった症例において、Srを使用することで受精率および胚盤胞発生率が有意に改善しました(図3)。また、妊娠率および出生率が改善しました(図4)。

 

【結論】

本研究により、同一周期内で複数のAOA法を比較することで、症例ごとに最も有効な活性化法を見極める可能性が示されました。また、Caで十分な効果が得られなかった症例において、Srを用いることで成績が有意に改善されることが明らかとなりました。今後は、CaおよびSrそれぞれに対する有効性が高い患者特性を明らかにし、より適切な活性化法を選択することで、早期の妊娠成立が期待されます。

 

京野アートクリニック仙台

培養部 川口菜摘

図1

図2

図3

図4

 

 

 

 

 

 


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