コラム 2025.06.25
日本では少子高齢化が進んでおり、2024年に生まれたお子さんは初めて70万人よりも少なくなっています。一方で、生殖補助医療(ART)によって生まれたお子さんの数は2022年のデータでは7万人を超えており、お子さんを希望される患者様にARTが少しでも貢献できているのではないかと思います。
ARTによる治療は2022年4月より保険適用となり、患者様の費用負担はこれまでと比べてある程度抑えられるようになってきました。ですが、この治療には回数制限があり、40歳未満では6回、40-42歳では3回の移植しか保険適用となりません。
セミナーなどで、患者様から「保険診療の回数制限がある中でどの様なクリニックを選べばよいか。」と質問をいただく事があったので、今回は患者様に合ったクリニック選びについて、医師の目線からコラムを書かせていただきます。
そもそも不妊治療クリニックに行く目的を考えると、お子様を授かり、安全に出産までたどり着くこと、が本来の目的ではないでしょうか。
そのゴールをもとに整理すると、体外受精のクリニック選びで大事なポイントを絞り込むとは
「患者さまに合った卵巣刺激、胚移植を行っていること」
です。
日本では、多胎リスクや卵巣の過剰刺激を懸念して、採卵後に全胚凍結することが一般的となっています。つまり、採卵の後に期間を置いて、凍結融解胚移植を行う形です。
国内での胚移植実施の割合は、凍結胚移植が全体の90%を占めていて、残り10%が新鮮胚移植となっています。ICMARTという世界規模のデータと比べると、これはかなり偏ったデータで、もう少し新鮮胚移植が検討されるべきと考えています。
新鮮胚移植では採卵した周期に移植も実施出来るので、より早く妊娠に至る可能性がある点や、胚への凍結によるダメージを少しでも減らせる点が有効な治療選択として挙げられます。
もちろん、過剰な卵巣刺激は行わず、患者様の卵巣の状態に合わせた刺激が必須となります。
凍結胚移植は得られた胚を一度凍結して、別の周期に移植を行う手法です。そのため、患者様の希望するスケジュールにある程度合わせながら治療を開始できるというメリットがあります。ただ、ホルモン補充周期という方法で移植スケジュールを組んだ場合、妊娠時の合併症(巨大児、妊娠高血圧症や癒着胎盤)などのリスク上昇が報告されており、日本における凍結胚移植に偏った治療選択が正しいかというと悩ましいのが現状です。
「少しでも早く妊娠したい」「安全・健康に出産したい」「適切な卵巣刺激や移植方法を提案したい」など、患者様の希望と医師の判断を色々な観点から相談する必要があります。
また、着床前胚異数性検査(PGT-A)や卵子提供・精子提供など、国内での法整備がまだなされていない部分も多くあります。
患者様の希望を聞きながら最善と考えられる治療を提供できる、幅広い治療の選択肢や経験を持つクリニックを選択されるのが良いのではないかと思います。
当院においても、患者様の希望を伺いながら、適切な治療選択が出来るようスタッフの皆さんと日々精進しています。
何かご不明な点があれば、いつでもご相談下さい。
京野アートクリニック高輪
理事長 京野廣一
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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