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医療コラム

学会報告 2025.07.18

多核胚においてもiDAScoreは有用か?@第66回日本卵子学会

胚培養士の宮本です。

5/31、6/1に広島県で行われた日本卵子学会に参加してまいりました。

※卵子学会とは・・・ヒトおよび哺乳類の卵子を研究対象の核し、生殖補助医療胚培養士の認定を行っている学会です。

 

今回、私は多核胚由来の胚盤胞とiDAScoreについての検討結果を学会発表いたしました。

 

受精卵(胚)の一つ一つの細胞には染色体情報が含まれる「核」が存在し、一つの細胞に一つの核があるのが通常とされています。

多核胚とは、核が一つの細胞の中に複数個ある受精卵のことを指します。

 

図. 非多核胚と多核胚

 

海外の報告では、多核胚は主に2細胞期のものと4細胞期のものについて検討されており、

胚発生不良や低妊娠率との関連があるという報告もあれば、胚盤胞となれば正倍数性(※)は非多核胚と変わらないという報告もあります。

(※正倍数性…染色体数が過不足ない状態のこと)

参考文献:Ezoe K, et al, Reprod Med Biol. (2024)

つまり、多核胚への評価の見解が定まっていないと言えます。

 

当院でも以前に多核胚についていくつか検討、学会発表を行ってきました。

当院での検討では、

・2細胞期の多核胚は発生率、妊娠率が多核のない胚(非多核胚)と同等である

・3細胞期以降の多核胚は発生率、妊娠率が低い

・多核の有無で出生児の状態に差はない

という結果となりました。

現在、当院では3細胞期以降の多核胚については胚移植する際の優先度を低くする方針を取っています。

 

iDAScoreはタイムラプスインキュベーターに搭載されているシステムで、AIを用いて胚にスコアを付け、妊娠の可能性が高い胚には高いスコアをつけます。

当院ではこれまでに、iDAScoreについての検討を行い、妊娠を予測する補助的なツールとして有用であると報告いたしました。

「iDAScore®の妊娠予測性能の検討」@第42回日本受精着床学会

実際にiDAScoreをつけていく中で、多核胚の中に高いスコアがつけられている胚が存在します。

医師と患者さまとの間で移植胚を選択する時、多核のない胚よりも多核胚が高スコアである場合、移植の優先順位をどうすべきか苦慮するだろうと考え、今回の検討を行いました。

 

結果を簡単にご紹介いたします。

 

  • 非多核胚と多核胚のiDAScoreに差はあるのか?
    ⇒差があります。多核胚の方が低スコアであることが分かりました。
  • なぜ非多核胚と多核胚とでスコアに差があるのか?
    ⇒iDAScoreに関連する胚盤胞のグレード、発生過程に見られる異常分割(ダイレクト分割、リバース分割)に着目すると、
    多核胚では胚盤胞のグレードが低い割合が高く、異常分割の頻度が高いことが分かりました。
  • 胚移植後の妊娠率に差はあるのか?
    ⇒iDAScoreごとで妊娠率を見ていくと、同じスコアであれば非多核胚と多核胚の妊娠率は同等です。また、スコアが上がるごとに妊娠率も上がることが分かりました。

 

結論として、多核胚は低スコアとなる発生過程を示す一方で、iDAScoreは多核の有無によらず妊娠の可能性が高い胚には高いスコアを付けることが示唆されました。

 

iDAScoreなどの最新のAIツールを使用することで、移植すべきか?凍結すべきか?と迷うような受精卵に対しても、柔軟に、様々な選択肢を皆さまに提案できるようになってまいりました。

「この受精卵が妊娠する胚だ!」と言えるところまで到達するには、まだまだ時間はかかると思いますが、今後も当院では丁寧にデータを集積・解析していき、より早い妊娠が実現できるようなサポートができればと思います。

 

仙台培養部

宮本 若葉


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