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医療コラム

論文紹介 2025.08.27

胚凍結時に使用する液体窒素(スラッシュ窒素対液体窒素)についての検討

体外受精において、移植可能な胚が複数個発育した場合や新鮮胚移植ではなく凍結融解胚移植を行う場合には受精卵を凍結しておく必要があります。

現在、当院をはじめ多くの施設では、ガラス化法という受精卵の中の水分を凍結保護剤で置換した後に液体窒素(LN)に投入して瞬時に凍結を行う方法を採用しています。

今回のコラムはこの液体窒素について検討した論文を紹介いたします。

 

参考論文: A randomized controlled trial comparing embryo vitrification with slush nitrogen to liquid nitrogen in women undergoing frozen embryo transfer: embryology and clinical outcomes.  A.M. Klimczak1.,et al  Human Reproduction, 2025

 

液体窒素中に固体窒素が分散した状態をスラッシュ窒素(SN)と言います。液体窒素(LN)より温度が低いために冷却速度が速められ凍結によるダメージを軽減できると考えられ、実際に液体窒素の代わりにスラッシュ窒素を用いることでヒト以外の胚やヒト卵子での生存率が向上するという結果が示されています。ヒト胚盤胞のガラス化凍結においてその生存率や妊娠率はいまだ不明であり、この論文では液体窒素の代替としてのスラッシュ窒素を評価することを目的に研究が行われました。

 

実験①

凍結融解は受精卵に少なからずダメージがあり、変性してしまう胚も存在します。

SN、LN各群50個の胚盤胞で凍結融解を繰り返し行い生存率を評価しました。

 

  生存率
凍結融解回数 LN SN
1回目 82%(41/50個) 100%(50/50個)
2回目 62%(31/50個) 100%(50/50個)
3回目 48%(24/50個) 100%(50/50個)
     
8回目 6%(3/50個) 50%(25/50個)
10回目 2%(1/50個) 34%(17/50個)

(本文より)

結果は複数回の凍結融解ではSNの使用がLNと比較して有意に生存率が高かったです。

 

実験②

臨床にてランダムに分けられたSN群111人LN群112人が凍結融解胚移植を行い、その胚盤胞の生存率、妊娠率や流産率について評価しました。

結果は胚盤胞の生存率はSN、LNいずれも100%であり、妊娠率、流産率においても有意差はありませんでした

 

この研究では、SNは胚盤胞のガラス化においてLNと同様の結果が得られました。複数回の凍結融解においてはその生存率においてSNの方がより優れていたものの、臨床において複数回の凍結融解を行う事例はあまり無いため、SNが臨床で活躍することはまだ現実的ではないと考えます。

 

今後も皆様にとってより良い治療を提供できるように最新の知見の収集にも努めてまいります。

疑問点、不明点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。


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