学会報告 2025.10.23
培養士の後藤です。
2025.8.28~29に名古屋で行われた第43回受精着床学会総会・学術講演会に参加してまいりました。私が発表した演題は、「単一胚移植から生じた多胎妊娠の転帰の検討」です。
今回、大変光栄なことに、180演題近くある中から、世界体外受精会議記念賞候補の臨床部門6演題にノミネートされました。その内容についてご紹介いたします。
多胎妊娠において、子宮の中に赤ちゃんが2人いる場合「双胎」、3人いる場合「品胎」と言います。一卵性か二卵性かというのをよく耳にするかと思いますが、これは「卵性診断」と言います。妊娠初期のエコー検査では、双胎が一卵性か二卵性かは判別できません。
「膜性診断」という、一絨毛膜性か二絨毛膜性かによって双胎の種類を診断しています。
子宮内で胎児を包んでいる卵膜は、胎児側から羊膜・絨毛膜・脱落膜から構成されており、
下記のイラストのように診断します。
通常二卵性であればDD双胎、一卵性であれば分裂時期により、DD双胎とMD双胎、MM双胎になると考えられてきました。しかし、初期胚の段階で胚が分裂する現象はARTでは認められないことから、単一胚移(SET)による一卵性双胎(MZ)の発生機序は、すべて胚盤胞になってから、栄養外胚葉(TE)と内細胞塊(ICM)の分裂の仕方によりMD双胎あるいはDD双胎になることを当院から報告しました。また、ヒューマンリプロダクションアップデートにおいて新たなMZ双胎形成のモデルが提唱されました。
このように、SET由来の双胎発生機序は様々であると考えられえていますが、ART手技の影響については様々な報告があり、妊娠転帰については報告が少ないのが現状です。
本研究では、
ART手技による一卵性双胎発生のリスト因子を明らかにすること
ART由来の一卵性双胎の膜性別妊娠転帰を明らかにすること を目的としました。
検討内容と結果です。
検討1:臨床成績
妻年齢・卵巣刺激・凍結融解胚移植時の子宮内膜調整法、ICSIやAHAによる透明帯操作、
移植胚の種類(新鮮胚vs凍結胚)やステージ(初期胚vs胚盤胞)、胚盤胞グレード(ICM vs TE)
→臨床成績のどの項目でも、有意差はありませんでした。
➡患者背景やART手技は、多胎リスクに影響を及ぼす可能性が低いことが示唆されました。
検討2:膜性別妊娠転帰
胎児心拍陽性率、生児獲得率、Vanishing twin率、流産率
*Vanishing twinとは…
双胎妊娠が判明した後、初期の段階で一方が流産となり、結果として単胎妊娠となること
➡MD双胎はDD双胎と比較して、双胎の心拍陽性率、双胎の生児獲得率が有意に高く、
SET由来のDD双胎はMD双胎と比較して、Vanishing twin率と流産率が有意に高く妊娠転帰が不良でした。
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SET由来のDD双胎において、胎児心拍確認前であるGSのみの枯死卵、つまり、初期流産の割合が高く、また、Vanishing twin(正常妊娠と枯死卵の併発)が多くありました。
これらのことから、DD双胎では枯死卵の割合が高いことが示唆され、ICMの分裂した割合によってその後の転帰に関わってくる可能性があります。
今後、タイムラプスシステムを用いて、胚盤胞の発生動態や移植直前のハッチング状態などの詳細をさらに検討し、一卵性双胎発生の機序や妊娠転帰について、明らかにしていく所存です。
京野アートクリニック仙台培養部 後藤
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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