学会報告 2025.10.31
8月末に開催された受精着床学会にて発表した内容を共有させていただきます。
「10年間の凍結胚の使用率と廃棄率の調査」という内容で発表をいたしました。
胚の凍結保存は有用な治療選択ですが、使用されずに保管され続ける胚もあり、保管し続ける患者様の経済的負担が発生しています。
そこで本研究では当院における10 年間の凍結胚の使用率、廃棄率を後方視的に調査し、凍結胚の利用状況を明らかにすることを目的としました。
2012年9月から2023年8月の期間に凍結した3103症例、4,841周期から得た13,222本の凍結胚 を対象に凍結から10年目までの凍結胚の使用率、廃棄率、挙児獲得までの採卵回数、融解胚数を調査しました。
累積使用率は初年度で36.8%、そこから徐々に増えていき保管5年で49.6%,に達した後は頭打ちになり、最終的な使用率は50.1%でした。また累積出産人数も同様の軌道を描く結果になりました。使用数、出産人数はグラフ下の表の値になりました。
下のグラフは挙児獲得までに必要だった採卵回数と妻の年齢を示しています。
対象期間で挙児獲得に至ったのは1793症例でした。
挙児獲得に至った症例を調査したところ
・3回以内の採卵で挙児獲得に至っていたのが95.2%
・平均採卵回数→1.7回
・平均融解デバイス本数→2.8本
・使用した凍結融解胚の76.2%が良好胚盤胞(胚盤胞のグレードにCがつかないもの)
という結果になりました。
凍結した全4841周期のうち初年度での廃棄は期限切れが11.6%の562周期、患者希望の廃棄が7.3%の352周期で計914周期でした。以降の廃棄率はゆるやかに増加し、10年での最終的な廃棄数は期限切れが12.4%の602周期、患者希望廃棄が14.2%の689周期で計1291周期でした。
今回の調査で、
・凍結から5年程度で胚の使用率は頭打ちになったこと
・出産した症例の大半は3回以内の採卵、3本以内の凍結胚で挙児獲得に至っていたことが明らかになりました。
これらの結果を参考にすることで、凍結する胚のグレードをご相談いただくことも可能となります。凍結本数が増えることや凍結物を保管し続けることで患者様の経済的負担に繋がることもあります。
不妊治療が保険適応されることで移植胚数に制限があるなか、凍結胚の利用状況や臨床成績を加味することでより最適な治療選択に繋げていくことを目指しております。
培養部 尾島
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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