コラム 2026.02.20
前のコラムでPGT-Aは染色体(本棚)の数、DFIはDNA(本の状態)の傷み具合を見ていると書きました。この2つは体を構成する情報という部分では関係はあり得るますが、一直線に結びつくものではありません。しかし、研究結果からお互いの関連性はどうなっているのでしょうか。文献的に調べてみました。
恐らく現在、正常胚がなかなかでないと悩んでいる方がいちばん気になっていることではないでしょうか。まず一般的に正常な胚(euploid)の出現率と最も相関するのは女性の年齢とされています。
現状の研究から見ると、結論から言うと、DFIとPGT-Aの関連性の研究結果は一貫していません。関連があるとする論文もありますし、ないとする論文もあります。
近年の系統的レビュー&メタ解析では、高DFI(30%以上)で正常な胚(euploid)率が低い方向の関連が示されています。1) また、PGT(主にPGT-A)症例で 高DFI(30%以上)が胚の異数性の胚(aneuploid)率増加と関連した報告もあります。2)
一方で、DFIと正常な胚(euploid)の出現率に相関なしとする臨床研究も複数あります。3)4) 中には「女性高年齢」など特定集団で検討しても相関がはっきりしない、という報告も出ています。5)
これより考えられるのは、PGT-Aの結果への関連性というのは、単一の因子だけではなく、複合的であることが考えられます。現時点では、DFIが高いほどPGT-Aのの結果に影響する可能性”はあるものの、とても大きな影響を及ぼすものではなく、集団や測定法で結果がブレる、という理解が現実的です。
ではPGT-Aで正常な胚(euploid)なら、精子がどんな状況でも問題ないのかということも気になります。ここも重要で、DFIが高いことによる悪影響は消えるとは限りません。前にも書きましたが、PGT-Aは基本的に「染色体」の数の異常を見ますが、DFIは「DNA」の断片化を見ているので、検査としては別軸です。
正常な胚(euploid)移植後の成績にDFIが影響しないとする研究がある一方で、DFIの高さでは正常な胚(euploid)の出現率には差は出ないものの、DFIが高いと妊娠率・流産率に差が出るをこと示唆する報告(学会報告)もあります。2)6)
一般的に、受精後の胚は、初期に卵子側の修復機構で精子DNA損傷をある程度補うとされています。しかし損傷が多い・修復能を超える・酸化ストレスが強い等の悪条件下では、胚発育(胚盤胞到達)低下、着床後の停止・流産などに影響し得ると考えられます。これは正常な胚(euploid)か異数性の胚(aneuploid)かということではなく、体が構成され成長する過程で遺伝子の情報のエラーの影響が大きく出てくると考えられます。
まず、DFI検査ですが、ヨーロッパもアメリカも、ガイドライン上は全例ルーチンではなく、状況を選んで行う流れが主流です。僕もその考えには賛同で、反復不成功など特定状況での活用をすべきと考えます。
大事なことは検査をするだけでなく、その対策をとることです。ヒアルロン酸ICSI、スパームセパレータはよりダメージの少ない成熟精子を選別できますが、ダメージ自体を解決するには至りません。しかし、精索静脈瘤の治療やTESEでDFIの改善やよりDFIの低い精子回収できる場合もあります。その診断のための精巣の超音波など診察を行う必要があり、治療のプランニングが出来るのは男性不妊の医師です。そのため、DFIの検査は男性不妊の専門医が在籍する病院で受けることをお勧めします。
DFIの改善ではPGT-Aの正常な胚(euploid)率を増やすに至る証拠はまだ弱いと考えられます。しかしながら、DFIが改善することで、胚盤胞の到達率や、良好胚の出現が改善してくるとするなら、検査ができる胚が増えることになります。そうすれば必然的に手元にのこる正常な胚(euploid)が増える可能性が高まります。
くじをあてるには確率を上げることも重要ですが、引く回数を増やすことも重要です。DFIの改善はは引く回数を増やす方に役に立つかもしれません。
大事なことは妊娠をつかさどるのはだた一つの検査結果だけではなく、多くの因子が関与しており、一つの結果が良くならないなら、他の部分でサポートすることも可能な場合があります。
以前から我々のクリニックが行っていることは、できるだけ多面的に状況を把握・改善し、的確な治療を行うということです。女性だけ、男性だけでいいという判断は行いません。当然、妊娠には男性の要素も大きくかかわります。胚の要素の半分は男性です。女性だけでなく、男性の検査・治療も積極的にアプローチすることをお勧めいたします。
1) Wan B, et al. European Journal of Medical Research. 2025.
2) Fu W, et al. Reproductive BioMedicine Online. 2023.
3) Gat I, et al. PLoS One. 2017.
4) Green KA, et al. Journal of Assisted Reproduction and Genetics. 2020.
5) Kong P, et al. Andrology. 2026.
6) Lozano FM, et al. Human Reproduction (Suppl). 2023.
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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