コラム 2026.02.23
春になると多くの方が悩まされる花粉症。僕も物心ついたころから花粉症です。僕の実家のある日光では、杉並木をはじめとして杉がたくさん生えており、杉花粉が黄色い雲のように飛んでいくのが見えます。車や洗濯物にも花粉が黄色く積もってきて、花粉症の身としては本当にいらだたしい気持ちになります。
最近では花粉症の薬もいいものが出ており、よく効きますし、副作用は少なくなりました。僕も今は子供のころとでは違った薬を飲んでいます。では、「花粉症そのもの」や「花粉症の薬」は、精子や妊活に影響するのでしょうか?
花粉症(アレルギー性鼻炎)は、単なる“鼻の病気”ではありません。体内ではヒスタミンやサイトカインと呼ばれる炎症物質が増え、軽度ながら全身性の炎症状態になります。そのため、花粉症の時期はだるさが出たり、なんとなく体調が悪かったりします。
慢性的な炎症や酸化ストレスは、理論的には精子のDNAや運動性に影響する可能性があります。実際、一部の研究ではアレルギー疾患を持つ男性で精子運動率の低下が報告された例もあります。自分の診療経験でも、非常に重たいアレルギーの患者さんで、アレルギーの増悪とともに精液所見が悪化し、アレルギーの改善とともに精液所見も戻ってきたことをがあります。
ただし、今回はアレルギーとしては比較的軽度とされる花粉症の話です。調べた結果、「花粉症=不妊になる」と断定できる強い証拠はありませんでした。多くの場合、軽症〜中等症の花粉症だけで明らかな不妊を起こすとは言えないと考えます。
花粉症の治療には主に抗ヒスタミン薬の内服や、外用薬(点鼻・点眼)使用します。では薬のタイプごとに見てみましょう。
抗ヒスタミン薬は読んで名のごとくヒスタミンをブロックします。ヒスタミンが作用するスイッチをレセプターといいますが、4つのタイプがあり、非常にざっくり言えばH1がアレルギー、H2が胃酸、H3が眠気、H4が免疫細胞に関与します。
精子にはH1とH2のレセプターがあり、それらをブロックすると精子の動きや作用に影響が出る可能性が示唆されています。では実際のところはどうでしょうか。
古いタイプの薬で、H1だけでなくほかのレセプターをブロックしてしまいます。そのため、眠気が出やすいのが特徴です。
ヒト精子に直接薬剤を加えた実験では、運動性を低下させる可能性が示された報告があります。また、高容量では勃起や射精を抑制する可能性も報告されています。ただしこれは実験室内での高濃度条件であり、通常の内服量で同じことが起きるとは限りません。また症例報告として、「第一世代抗ヒスタミン薬を服用中に精子運動率が著しく低下し、中止後に改善した」という症例報告はありますが、非常にまれと考えていただいて問題ありません。
しかしながら、これらの薬は 眠気・だるさ・口渇などの副作用が強く、性機能面では性欲や性反応が落ちることがあり得ます。これは勃起障害というより、コンディションの悪化による意欲の低下と考えられます。
現在よく使われている新しいタイプの薬です。より選択的にH1レセプターをブロックします。中枢作用が少なく、眠気も起こりにくいです。これらが通常量で精液所見を悪化させるという明確な臨床データはほとんどありません。
しかしながら一部の薬は抗ヒスタミン薬と同様の副作用を生じることもありますので、眠気などで意欲の低下を起こす可能性はあります。あまり眠気などが困っている方は、アレルギーの担当医に相談して、薬を変えてみてもいいかもしれません。現在処方薬としては、眠気が少なく車の運転時の注意事項が省かれている薬としてはビラノア、アレグラ、ディレグラ、クラリチン、デザレックスなどがあります。
また、仮に花粉症の薬を飲みはじめて、精液所見が悪化した場合はまずは不妊治療の担当医にご相談いただくのがよいと考えます。
花粉症の特に鼻炎には鼻に噴霧ずるステロイド剤も有効です。ステロイドというと悪いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、内服するわけではないので、全身性影響は少なく、即効性もあり、非常に有効な治療手段の一つです。これも精子形成への明確な悪影響は示されておらず、比較的安心して使用できると考えられます。
市販の点鼻薬の中には血管収縮剤が入っているものがあり、これらは2週間以上連続使用すると薬剤性鼻炎を引き起こし、逆に花が詰まってしまうことがあります。そのため、点鼻薬は病院で処方されたものを使用することをお勧めします。
意外に重要なのがここです。
重い花粉症を放置すると、鼻が詰まってぼうっとしたり、よく眠れなかったりなど、身体に負担がかかってきます。ストレスも強くなりますので、いろいろなことをする気力も落ちてきます。
花粉症自体の症状は熱を出したりするわけでもないので、身体的にはそこまで大きい負担がある分ければありませんが、不快な症状によって疲労、不眠、ストレスの増加、集中力の低下など2次的な問題を引き起こします。それにより、勃起機能の低下、性欲低下なども起こりえます。
この問題は、生理的にも問題を起こします。鼻づまりによる睡眠の質の低下は、男性ホルモン(テストステロン)の分泌低下とも関連すると言われています。つまり、症状を我慢すること自体が妊活にとってマイナスになり得るのです。
妊活中だからといって、自己判断で薬を中止する必要はありません。
むしろ、症状を適切にコントロールし、睡眠と体調を整えることが重要です。
内服していて気になる場合は、以下のことを検討してください
・第一世代抗ヒスタミン薬を避ける
・点鼻ステロイドを併用する
・内服の種類をより副作用が少ないものに変更する
アレルギーの薬は慣れや、その人の好む効き方などがあるため、新しい薬が必ずしも優秀とは限りません。副作用が少なくても効果が不十分ではよくありません。アレルギーの薬は様々な特徴があり、自分に合った薬を見つけるのも重要です。
OTC(薬局で買える薬)も増えてきています。第2世代で眠気の少ないのものは、フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラFX)、ロラタジン(クラリチンEX)、エピナスチン塩酸塩(アレジオン20)などでしょうか。
もし、花粉症シーズンに精液検査の結果が悪化した場合は、1回で判断せず、2〜3か月後に再検査することが大切です。精子は約3か月かけて作られ、常に更新されています。一過性に薬の影響があったとしても、多くの場合、時間の経過とともに改善していきます。
内服に悩んでいる場合や、ご相談がありましたら、男性外来まで受診ください。
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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