学会報告 2026.03.11
こんにちは。胚培養士の宮本です。
今回、私は奈良県で行われた第16回日本がん・生殖医療学会学術集会に参加してまいりました。
「卵巣組織凍結目的の低温搬送システムの性能評価と臨床症例における温度管理の実際」というタイトルで学会発表を行い、それが優秀演題候補として選出されました。
簡単に発表内容をご紹介いたします。
OTCとは摘出した卵巣を組織処理して凍結保存することです。
女性のがん患者さんにとって、がん治療によって失われる可能性のある妊孕性(卵子が減る等)を温存する手法の中で、OTCは特に小児やがん治療をすぐに行う必要のある方にとって有用な妊孕性温存療法となります。
OTCは卵子や胚凍結と異なり、限られた施設で実施可能となっています。
現在、全国で卵子や胚凍結は170施設で実施可能であるのに対し、OTCは53施設のみで、その施設数も地域差があります。
表1. 地域別OTC実施可能施設数
| 北海道 | 東北 | 関東 | 東海 | 北陸 | 近畿 | 中国 | 四国 | 九州
沖縄 |
| 6 | 4 | 17 | 4 | 0 | 11 | 4 | 3 | 4 |
当院(HOPE:日本卵巣組織凍結保存センター)ではOTC先進国であるドイツをはじめとする欧州と同様の卵巣組織低温搬送システムを活用しており、OTCの集約化・均てん化を目指しています。
コラム:卵巣組織凍結と凍結卵巣組織融解移植:HOPE(日本卵巣組織保存センター)とFertiPROTEKT
今回の学会では、この低温搬送システムの性能確認と実際にOTCを行った症例の温度管理について報告しました。
低温搬送システムに用いる搬送BOXに保冷剤をセットにして、2つの条件下において計10個のBOXの性能確認を行いました。
低温条件として、当院と同じシステムを活用している欧州のFertiPROTEKTの論文[Jana Liebenthron, et al, Reprod Biomed Online(2019)]から、2~8℃と設定しています。
A群は実際の摘出卵巣の受取および搬送を想定し、試験開始から2時間後に1度BOXを開封し、直後に再閉鎖した条件、B群はコントロールとして1度もBOXを開封しない条件とし、30時間の温度モニタリングを行いました。
図1. 搬送BOXの温度モニタリングの概略
結果
図2. 温度モニタリングの状態
2~8℃の温度域を赤枠で示しています。
B群の一部の搬送BOXでは温度モニタリング開始直後に1℃と少し低い温度を示しましたが、それら含め全てのBOXで8℃以下を30時間維持可能でした。
低温搬送を行った23症例において、卵巣摘出を行った病院が関東圏の症例19例(C群)、関東以外の症例4例(D群)を対象としました。
それぞれ搬送時間、温度管理状況、卵巣内の卵胞の生存性を調べました。
当院で行っている卵胞生存確認試験は、カルセイン染色という生存細胞が緑色に蛍光発色する試薬を用い、搬送によって卵胞が死滅していないかを確認しています。
余剰卵巣皮質から一部を採取し、コラゲナーゼという試薬で溶解してカルセイン染色を行います。
図3. 卵胞生存確認試験
右の写真のように、生存卵胞は緑色に光っており、その数をカウントしています。
結果
表2. 臨床症例の搬送状況
卵巣組織の搬送時間はC群40分、D群4時間となっており、D群の最大時間は25時間でした。
搬送時の温度は低い温度域を示す症例が一部確認されましたが、全てにおいて生存卵胞を確認できました。
当院の低温搬送システムでは8℃以下で温度管理が可能であることが示されました。
一方で2℃を下回るケースもあるため、今後も温度管理をさらに厳重に行う必要があることが課題です。
今後の実施予定の取り組みとして、温度モニターを最新のものへと変更することで、より安心・安全な卵巣組織の運搬が実現できると考えております。
当院・HOPEは東京都品川区にあるOTC専門の機関です。
この搬送システムを用いれば、OTCを受けたい患者さまがどの地域にお住まいでも、OTCすることが可能となります。
当院のOTCについてご不明な点がございましたら、以下のURLをご参照の上お問い合わせください。
妊孕性温存 | 不妊治療 京野アートクリニック高輪(東京 港区 品川)
培養部/HOPEスタッフ
宮本 若葉
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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