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医療コラム

コラム 2026.04.09

保険診療で正しい男性不妊治療を 薬のはなし⑥ 男性が服用すると不妊や生まれてくる子供に影響する可能性のある薬はなに?

男性の服用している薬が不妊や生まれてくる子供に影響する?

女性が妊娠していると、使ってはいけない薬があったり、アルコールやカフェインを控えましょうと言われたりと、おなかの子供に影響するからと生活に制限がかかることがあります。これは胎盤を通して子供に薬やアルコールなどが移行してしまい、影響が出る可能性があるからです。
男性不妊の外来をしていると、「薬を飲んでいるけど、妊娠に影響はないの?」といったご相談を多くいただきます。
男性はおなかで子供を育てることがありませんが、内服薬などで不妊や出生児に影響が出ることはあるのでしょうか。今回まとめてみました。

 精子の状態に影響する薬

これはやはりいくつかあると考えていいと思います。
精液所見の悪化は妊娠するかどうかに影響を主に及ぼします。
大切なことはその薬をやめれば元に戻るのか、それとも戻らないのかということです。元に戻るとされる薬も、長期使用の場合など一部の患者については戻らないこともあるので、戻るから使っても大丈夫ということにはならないので中止が必要です。

①精液所見や精子の質が内服期間中に低下する薬
(中止すると基本的には元に戻る)

・5α還元酵素阻害薬:フィナステリド(プロペシア・フィンペシアなど)・デュタステリド(ザガーロなど)
抜け毛の治療薬(AGA)や前立腺肥大症の治療薬として使われます。これらの薬は男性ホルモンであるテストステロンが効果の強い状態であるジヒドロテストステロン(DHT)に代わるのをブロックします。そのため男性ホルモンの効果が落ちて抜け毛が減るのですが、精子形成にも男性ホルモンは必要であるため、精子形成に悪影響を及ぼします。これらの薬は長期内服を前提としているものであることも影響を及ぼす一因と考えられます。一部では重度の乏精子症になることも報告されています。
内服していて妊娠した場合、子供への形態異常のリスク増加はほぼ否定的とされています。
基本的に内服をやめれば数か月で精液所見の改善がみられると考えられます。
(Samplaski et al., 2013)8)

・テストステロン補充療法(エナルモン・ネビドなど)
男性更年期の治療で使用するものですが、近年ボディビルなどの筋肉の増量目的で使用する若年男性が増えています。本来は精巣が産生するべき男性ホルモン自体を投与しているので、精巣は十分な男性ホルモンがあると認識し、動きを止めてしまいます。その影響で精子形成も止まってしまい、高率に無精子症になります。基本的には4か月程度休めば精子は出現するとされていますが、長期使用の場合には改善するまでの期間が長くなったり、数%もとに戻らないこともあります。

・抗精神病薬:SSRI(パキシルなど)、スルピリド(ドグマチール)
どちらもうつ病の治療なのどで、比較的よくつかわれる薬です。SSRIはセロトニン再取り込みを阻害し、体内のセロトニンを増加させます。精巣の細胞にはこの物質の受容体があり、精子形成に影響が起こります。酸化ストレスとミトコンドリア障害を通じて、精子のDNA損傷を起こし、精子の質を低下させるといわれます。また、一部のSSRIは興奮障害を起こし、射精しにくくなることがあります。
スルピリドは乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンを増加させ、精子形成を阻害します。
どちらも薬剤の変更や変更で改善しますが、メンタル的な不調も不妊に影響するため、精神科の担当医と相談しながら変更する必要があります。

・抗生物質:ST合剤(バクタ)、ニトロフラントイン
ST合剤は日本ではあまり使われませんし、ニトロフラントインは日本では販売されていません。しかし海外ではよく使用されている抗生物質です。特にニトロフラントインはアメリカでは尿路感染症の第一選択薬になっています。ST合剤はビタミンの一種である葉酸の代謝阻害、ニトロフラントインでは酸化ストレスの増加で精子形成に影響が出る可能性あるといわれます。一時的な内服では影響が出るとは考えにくく、長期内服の際に注意が必要です。基本的にどちらも中止することで精液所見は回復するとされています。

②精液所見や精子の質が投薬を中止・終了しても戻らない可能性がある薬

・抗がん剤・免疫抑制剤
これらの薬は
① 細胞分裂阻害:精子形成そのものを抑制
② 酸化ストレス・ミトコンドリア障害
③ 内分泌(テストステロン系)への影響
等から精子形成への影響がみられます。非常に精巣毒性が強いものもあり、治療終了後も精子形成が戻らず無精子症になったり、精子が非常に少なくなってしまうなど、影響が続くこともあります。そのため、がん治療の前には精子を凍結保存する妊孕性温存が推奨されます。

 将来生まれてくる赤ちゃんへの影響がある薬

これは精液を通して薬剤が母体に移行して影響を起こすことが主に考えられる薬が主になります。

① 明確に注意が必要な薬

多発性骨髄腫等の治療薬:サリドマイド、レナリドミド
サリドマイドというと催奇形性があり、サリドマイド事件が有名です。サリドマイド事件は妊婦がこの薬を内服したことで起こっていますが、これらの薬は精液中にも移行することが知られており、男性側でも避妊が必須です。
(Palmer et al., 2007)11)(Sifontis et al., 2006)12)

② 影響が懸念されるが確定していない薬

・抗がん剤
抗がん剤は先述した通り、精子形成自体には明確な影響があります。しかし「男性が抗がん剤を使ったあとに妊娠した場合、出生児の先天異常が明確に増える」とまでは現在の大規模研究では言い切れません。一方で、治療直後の精子ではDNA損傷や染色体異常、エピジェネティック変化が増える可能性があり、その時期の受精では受精不全、胚発育不良、流産リスク上昇の理論的・生物学的懸念があります。
多くの抗がん剤が治療終了後半年程度の避妊を推奨しています。

・前述した精子の状態に影響する薬たち
これらの薬はDNA損傷を及ぼすものが多く含まれます。DNA損傷は妊娠成績や流産に影響を及ぼすことはわかってきていますが、出生児への影響はいまだ不明といえます。過敏になることはありませんが、中止可能なものはやめていくことがリスクを軽減することにはつながると考えられます。

まとめると

男性が使用して明確に出生児に影響が出る薬剤は比較的少なく、若いうちに使用することはまれな薬が多いと考えられ、使ってしまったから子供に影響が出ることに神経質になることはないと考えます。
しかしながら、精子形成に影響する薬は比較的多く、使用する機会も多いものもあります。
これらの薬に言えることは、1-2度の投薬では影響は少ないものの、長期使用で徐々に精子形成が悪くなるということです。そして多くはやめることで状況が改善します。
病気の治療で内服が必要な薬の場合は、担当医と相談しながら調整することをお勧めします。AGAの治療薬や男性ホルモン製剤など自身の意思で開始した薬は、自身の意思でやめる必要があります。妊活中はそれらの薬はいったん休むことをお勧めします。


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