論文紹介 2026.07.29
こんにちは。仙台培養部の山口です。
今回は「卵丘細胞を使用した精子選択は胚盤胞の質を向上させる」というスペインの論文を紹介します。
このコラムでは、読んでいただく患者さまにとってわかりやすくなるように、notebookLMを用いた画像作成を行っています。
卵丘細胞は卵子の周りを取り囲むように膨化した細胞の塊を表します。
主にヒアルロン酸で構成されており、卵子を保護したり、成熟を促進したりします。精子の頭部の先端には「先体」と呼ばれるヒアルロン酸分解酵素を分泌する部分があり、これによって卵丘細胞を分解して卵子内に侵入することができると「受精」が成立します。
今回ご紹介する論文において、精子選別の方法に卵丘細胞を使用した精子選別を用いています。
通常、顕微授精(ICSI)を行う際、精子は見た目と運動性のみ評価され選択されますが、この卵丘細胞を用いた精子選別は卵丘細胞を通り抜けられた精子の中から見た目と運動性が良いものをICSIに使用するということです。
それでは論文の内容を見てみましょう。
論文タイトル:Hyaluronic acid-sperm selection significantly improves the clinical outcome of couples with previous ICSI cycles failure
著書:Paola Scaruffi, Francesca Bovis, Ida Casciano, Elena Maccarini, Caterina De Leo Irene Gazzo, Claudia Massarotti, Fausta Sozzi, Sara Stigliani, Paola Anserini
この論文では大きく分けて2つの検討がされていました。
1つ目は卵丘細胞を使用した精子選別デバイス(Oosafe® ICSIディッシュ)でのICSIと通常のICSIとで受精率、良好胚盤胞率、妊娠率、妊娠継続率に違いが出るかの検討でした。2つ目は年齢別で分けたときに胚盤胞率、良好胚盤胞率に違いが出るかの検討でした。
2022年7月-2024年12月にICSIを行った95組、99周期。
グループ1:密度勾配遠心法※の後にOosafe® ICSIディッシュにて精子選別を行った554個の卵子
グループ2:密度勾配遠心法のみを行った543個の卵子
※密度勾配遠心法:異なる密度の試薬を重層して成熟した精子のみを沈殿させて回収する、最もよく行われる精液の調整方法です。
受精率、胚盤胞到達率、妊娠率、妊娠継続率に有意差は見られませんでしたが、グループ1において良好胚盤胞率が有意に高くなりました。また、グループ1の40歳以上の患者においてD5胚盤胞の質と胚盤胞到達率が有意に高くなりました。
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評価項目
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標準的な顕微授精 (2回目)
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卵丘細胞を用いた精子選別
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改善のポイント
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良好胚率 (受精卵の質)
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52%
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66%
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受精卵の質が有意に向上
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着床率
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9%
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25%
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約2.7倍に
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臨床妊娠率
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14%
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34%
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2倍以上の妊娠率
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出生率 (無事出産に至る率)
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5%
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17%
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出産に至る確率も有意に改善
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今回紹介した論文の「卵丘細胞を使用した精子選択デバイス」はまだ研究段階であり効果の検証途中のため当院では臨床応用しておりません。
ただ、良好な精子を選別して使用するということが妊娠成績に影響を与える可能性は十分高いと思います。
精子選択デバイスは他にも保険と併用できるヒアルロン酸ICSIやスパームセパレーターなどもございます。全ての方が対象となるわけではありませんが、ARTを行う上で参考になればと思い、今回紹介させていただきました。
受精には卵子だけでなく、精子の質も重要です。
こうした取り組みを通じて、一人でも多くの方が妊娠・出産という結果にたどり着けるよう、これからも研鑽を重ねてまいります。
仙台培養部 山口
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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