論文紹介 2018.12.18
男性の中には、生活習慣病を含め、様々な疾患を抱えている方がいらっしゃると思います。
たとえば、心臓病、糖尿病、皮膚病、歯周病、肥満、高血圧など…
このようないくつかの疾患が共存(併存)するものを併存症(併存疾患)といいます。具合が悪くなって病院に診てもらう時、高血圧や喘息を持っているかどうかのアンケートに答えた経験があると思います。これは、今ある症状のほかに疾患をもっていないか、つまり併存疾患がないかどうかの確認をしています。
例えば歯周病の患者さんを診る場合、高血圧や心臓病などの併存疾患がないかどうか留意しながら治療を進めていく必要があるそうです。
合併症と似ていますが、ある疾患が原因で別の症状が起こる合併症(糖尿病を原因として起こる高血圧など)とは異なり、それぞれ別の原因で起こるのが併存疾患です。
これまでの研究から、不妊症の男性には併存疾患を持つ人が多く、また併存疾患を持つ男性は精子を作る機能(造精機能)が低下しているということが報告されています。
今回ご紹介する論文では、併存疾患の治療をすることで、精子形成に効果があるかどうかを調べています。
不妊症でない男性では、併存疾患の有病率は9.1%でした。それと比べて、不妊症の男性の併存疾患の有病率は21.7%と高く、疾患の種類としては、高血圧症、高脂血症、高尿酸血症、皮膚疾患が多く、生活習慣病と呼ばれるものが多いことが分かりました。また、皮膚疾患をもつ男性では、無精子症の割合が高いことも分かりました。アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を持つ男性は、酸化ストレスを引き起こす炎症性サイトカインを保有していることがあり、その酸化ストレスによって精子形成における障害や精子自体の損傷が起こると考えられています。
また不妊症の男性の中で、併存疾患がある人では、ない人と比べて精液量・精子濃度・運動率が低く、無精子症患者の割合が高いことも分かりました(下表)。
併存疾患をもつ250名の不妊男性を調べたところ、自主的な食事療法・運動、または医学療法を行うことによって、111名(44.4%)に運動精子数の改善が見られました。
また、併存疾患を治療した男性では98名中58名(59.2%)に、治療していない男性では152名中51名(33.6%)に運動精子数の改善が見られ、治療をした患者の方がより多く改善したことが分かりました。
併存疾患の治療をきちんとするに越したことはありませんが、自主的に健康的な生活を心がけるだけでも、低下した造精機能を改善できる可能性があるようです。
併存疾患は造精機能を損なわせ、不妊の原因となることもあります。
併存疾患の治療をすることで、健康状態だけでなく、造精機能の回復も期待できます。
日常でも、健康の維持と生活習慣病の予防を心がけていきましょう。
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