コラム 2023.05.17
こんにちは。仙台院培養士の柴崎です。
最近、再生医療の一種であるPRP(多血小板血漿)の子宮内・卵巣注入が、この不妊治療の分野でも注目されています。
昨年末にもPRP療法の最新情報についてお知らせしましたが、今回は「PRPの卵巣注入は受精卵の染色体正常率を改善するか?」というパイロットスタディについてご紹介したいと思います。
まず不妊治療分野におけるPRP療法とはどういったものかというと、自身の血液から血小板が多く含まれる部分のみを抽出したPRPには、多くの成長因子が含まれますが、
これを子宮内または卵巣内に注入することによって子宮内膜を厚くする、卵巣機能を改善する効果が期待できると言われています。
当院では、PRPの中から成長因子だけを凝縮してフリーズドライさせたPFC-FD療法という方法で、実施が可能です。
※PRP療法・PFC-FD療法について、さらに詳しく知りたい方はコチラの記事もご覧ください。
論文タイトル:Intraovarian platelet-rich plasma administration could improve blastocyst euploidy rates in women undergoing in vitro fertilization
著者:Zaher Merhiら
この論文は、PRP卵巣内投与前後で、体外受精における染色体正常率を比較した初めての報告です。
≪対象・方法≫
PRP療法前に過去に1回以上、体外受精の治療を行い、その後PRP投与後に3か月以内に体外受精を行った症例のうち、PRP療法前後とも着床前遺伝学的診断を実施した12症例が対象です。
同一症例における1回目と2回目の治療成績を比較した、ということです。卵巣刺激法は、1回目も2回目も同様の方法が用いられています。
受精卵は胚盤胞の段階で細胞の一部分をとって着床前遺伝学的診断を行っています。
≪結果≫
患者さまの平均年齢は、40.08±1.46歳、BMIは26.18±1.18 kg/m2でした。下の表は、1回目と2回目の治療結果をまとめたものです。採卵個数や良好胚盤胞の個数は、PRP投与前後で差は認められませんでしたが、染色体正常率は、1回目が8.11%、2回目が39.28%と有意に高い結果となりました。
次の表は、検討した12名の患者さまのそれぞれの詳細なデータを示したものです。
赤で示した3名の患者さまが、PRP卵巣投与を行った2回目の治療で、妊娠が確認されました。
また、緑の枠で囲った部分は、1回目と2回目の染色体正常率を示しています。個数が少ないため、数値が極端になっているケースもありますが、改善を認めた症例が確認されました。
まとめ
染色体正常率を改善するという結果は、これまでなかなか妊娠できなかった高齢の患者さまの助けになる可能性があるのではないかと考えられます。
PFC-FD療法は、高輪院だけでなく、仙台、盛岡でも実施可能です。なお卵巣への注入は高輪院のみ実施しており、仙台、盛岡は子宮内膜への注入を行っております。
この治療法に興味をもった方、話を聞いてみたいと思った方は、お気軽にスタッフまでお尋ねください。
関連ページ
京野アートクリニック高輪「PRP療法・PFC-FD療法について」
京野アートクリニック高輪「PRP療法・PFC-FD療法を用いた不妊治療の最新情報」
https://ivf-kyono.com/column/post-5949
Clinical and Experimental Reproductive Medicine
https://ecerm.org/journal/view.php?doi=10.5653/cerm.2021.05057
京野アートクリニック仙台 培養部
柴崎世菜
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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