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医療コラム
当院におけるTESE (精巣内精子回収術)の治療成績と妊娠成立にむけた最適な治療方法（論文紹介）

医療コラム

論文紹介 2023.10.05

当院におけるTESE (精巣内精子回収術)の治療成績と妊娠成立にむけた最適な治療方法（論文紹介）

無精子症とは射出精液中に精子が存在しない状態のことをいい、一般に成人男性の約1％が無精子症であるとされています。

無精子症や重度の射精障害により射出精子の採取が難しい場合に、精巣内から精子を回収する精巣内精子回収術(TESE; testicular sperm extraction)という方法があります。

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京野アートクリニックグループでも開院以来1100件以上のTESEを実施してまいりました。

今回ご紹介するのは、2022年4月に受精着床学会誌に掲載されました、1996年から2020年に当院でTESEを行った1074症例の妊娠成績などをまとめた論文になります。

TESEで得られた精子で治療を行う場合

TESEの手術と同じ日に採卵を行い、その日にとれた卵子（新鮮卵子）と精子（新鮮TESE精子）で顕微授精を行う。
採卵を行い、その日にとれた卵子（新鮮卵子）とあらかじめ別の日にTESEを行い凍結保存しておいた精子(凍結TESE精子)を採卵の日に融かして顕微授精を行う。
あらかじめ別の日に採卵を行い凍結保存しておいた卵子(凍結卵子)をTESE当日に融かし、その日にとれた精子(新鮮TESE精子)と顕微授精を行う。
凍結保存しておいた卵子(凍結卵子) とTESEを行い凍結保存しておいた精子(凍結TESE精子)両方を融かして顕微授精を行う。

といった4通りの方法があります。

本論文ではこの4通りの方法で成績にどのような違いがでるかの比較を行っています。

結果は以下のようになりました。

	① 新鮮卵子- 新鮮TESE精子	② 新鮮卵子- 凍結TESE精子	③ 凍結卵子- 新鮮TESE精子	④ 凍結卵子- 凍結TESE精子	P値
移植数	536	685	187	23	–
移植時年齢 (mean±SD)	32.9 ± 4.6	35.2 ± 4.5	33.9 ± 4.8	38.2 ± 4.9	<0.01
妊娠率 (%)	44.6 (239 / 536)^a	35.3 (242 / 685)^b	36.9 (69 / 187)	26.1 (6 / 23)	*
出生率 (%)	34.5 (185 / 536)^a	25.5 (175 / 685)^b	27.3 (51 / 187)	21.7 (5 / 23)	*
流産率 (%)	19.2 (46 / 239)	22.7 (55 / 242)	21.7 (15 / 69)	16.7 (1 / 6)	*
出生児平均体重 (kg)	3.048 ± 0.46	3.012 ± 0.46	3.034 ± 0.44	3.236 ± 0.38	0.68
出生児平均身長 (cm)	48.9 ± 2.8	48.9 ± 2.6	49.4 ± 2.2	49.7 ± 0.47	0.69
先天異常数	2	0	0	0	–

*妊娠率,出生率でa,b間に有意差あり(P<0.01)。流産率では有意差なし。

4グループの中で妊娠率と出生率が最も高かったのが新鮮卵子と新鮮TESE精子を用いたグループでした。さらに、このグループと新鮮卵子と凍結TESE精子を用いたグループでは妊娠率、出生率ともに統計学的な差がでており、凍結TESE精子よりも新鮮TESE精子を用いた方がよい成績が得られることが明らかになりました。

以上の結果から当院では、妊娠、出産の可能性を高めるための最適な治療選択として採卵とTESEを同じ日に実施し、新鮮TESE精子と新鮮卵子を治療に用いることが望ましいと考えます。

顕微授精は生殖専門医の在籍する生殖補助医療実施登録施設でないと行えません。

そのため登録施設以外の病院でTESEを実施した場合、TESEで回収した精子を一度凍結し、顕微授精ができる別施設に搬送する必要があります。