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医療コラム

コラム 2023.10.20

凍結物(未受精卵子・受精卵・精子)の凍結保管について

東京都のノンメディカルな卵子凍結に対しての助成金が始まり、注目を集めています。

関連コラム:東京都における都民への社会的(計画的 or ノンメディカル)卵子凍結の助成金が開始します

 

助成金開始の前からも多くの問い合わせをいただいており、その中でも気になったものとして、

  • 凍結された卵子は厳重に管理されているものなのか
  • どのような状態で保管されているのか

というものがございました。

今回の卵子凍結の助成金は1回の卵子凍結分しか出ないことが明記されておりますので、

患者様がこの1回にかける思いが強いことをひしひしと感じます。

近年、世界的にも凍結タンクに関わる事故が発生しているのも事実であり、情報収集をされている患者様の中には、不安に感じられている方が多くいらっしゃるのだと感じましたので、当院の凍結保管状況を簡単ですが、紹介させていただきます。

 

東日本大震災の教訓を活かして


卵子凍結の最終的なゴールは、その凍結卵子を用いて、妊娠・出産することにあるため、

凍結して終了ではありません。安全に長期間保管する義務が医療機関にはあります。

日本は世界稀に見るほどの災害大国でもありますので、凍結保管物災害対策は必須です。

 

当院では開院時より妊孕性温存の卵子凍結を含めて自施設での長期管理を徹底しております。

最近では凍結管理を他施設に委託するケースもありますが、当院では現状自施設での管理を徹底しています。

それは、移送時に発生しうる凍結物の紛失や障害などのリスクを回避するという明確なメリットがあるからです。

 

また、東日本大震災が発生した際にも幸い凍結保管物への影響はありませんでしたが、

その経験を活かし、凍結物の保管には細心の注意を払っております。

例えば、

  1. 鍵付きの個別保管場所にクッションを設置する
  2. 胚・卵子・精子を同じタンクに保管しない
  3. 液体窒素の週3回以上の残量確認と補充

などの対策を講じています。

左図 卵子保管用タンク 右図 鍵付きの個別保管場所 (灰色:クッション)

凍結保存するタンクは魔法瓶のような真空構造によって、中の液体窒素(-196℃)を維持します。

よって外部からの衝撃により真空構造が壊れてしまい機能しなくなることがあります。

このような衝撃を吸収する箇所や、個室により移動を制限することで安全に管理できます。

 

ART施設ならではの取り組み


当院は生殖補助医療の専門医療機関ですので、凍結物の取違いなどは万が一にでも防止することを徹底しています。

このように卵子や胚を保管する容器にはID、氏名、日付、保管場所、個数の記載に加えてバーコード用シールを添付しております。

スタッフの指差し・声だし確認に加えてバーコードでの二段階認証することで取違い防止をしております。

こうした管理が実施・徹底されていることは、仙台院・高輪院が合同で監査を行ったり、外部の審査機関からの厳しい監査を受けた上で常に確認し、アップデートしています。

左図:レーザーでのバーコード確認 右図上:容器に乗せた卵子 右図下:液体窒素中の卵子

 

患者様にとっては、日常的に見ることがない凍結保管の現状や当院の取り組みについて紹介させていただきました。

以前、学会の調査でも報告がありましたが、凍結保管体制は施設により、取り組みがまちまちであることが知られていますので、十分に情報収集をして、大切な卵子や受精卵、精子を預けていただければと思います。

培養部主任 奥山紀之


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診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)

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