論文紹介 2023.10.23
近年、胚を非侵襲的に評価できるタイムラプスモニタリング画像を用いた研究が盛んに行われています。
本コラムでは、初期胚の異常分割が胚盤胞に及ぼす影響についての論文を紹介したいと思います。
今回は、ダイレクト分割に着目した報告となります。
ダイレクト分割とは、一つの細胞が3つ以上に分割してしまう現象です。
ダイレクト分割の見られた胚は胚盤胞の発育率、初期胚移植の着床率が低いことが知られています。
しかし、胚盤胞まで成長すれば、妊娠率に影響はなく、染色体正常率(euploid率)も影響はないといわれています。
そこで、ダイレクト分割が見られた胚は、胚盤胞到達率が低下するものの、euploid率に影響しない理由について調べました。
次世代シーケンサー解析を行い、euploid率を比較したところ、正常分割した胚のeuploid率は33.3%、ダイレクト分割が見られた胚のeuploid率は38.3%で統計学的な差はありませんでした。
表1 各郡における次世代シーケンサー解析の結果(一部抜粋)
次に、初期胚において異常な分割をした細胞が胚盤胞に組み込まれるのか、タイムラプス画像を用いて調べました(図1)。その結果、ダイレクト分割で生成された細胞は正常分割した細胞と比較して、統計学的に胚盤胞に組み込まれる割合が低下していました。
青:ダイレクト由来 白:正常分割由来
図1 イメージ図(一部改変)
表2 初期胚動態における胚盤胞寄与率(一部抜粋)
以上のことから、ダイレクト分割で生成された細胞は、正常分割した細胞と比較して、胚盤胞に組み込まれる割合が低いため、胚盤胞のeuploid率にほとんど影響していないことが示唆されました。
このような報告の他に受精の兆候を見逃さないなど、タイムラプスモニタリングには様々なメリットがあります。当院においても、10年近く前からタイムラプス型インキュベータを採用しており、胚の動態を重要視して治療を進めております。
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培養器(インキュベーター)によるその後の受精卵への影響について
京野アートクリニック高輪培養部
岡田綾加
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