論文紹介 2024.09.23
こんにちは。仙台院培養士の佐々木です。
凍結融解胚移植 (FET)の準備をするにあたり、子宮内膜を適切な厚さに調整する必要があります (子宮内膜調整法)。子宮内膜調整法には大きく分けてE2製剤やP4製剤を使用したホルモン補充周期と月経周期に合わせた自然周期の2種類がございます。今回はこの子宮内膜調整法の違いが、妊娠後の周産期合併症や出生児の体重にどのような影響を与えるのか比較した論文をご紹介いたします。
「Adverse obstetric and perinatal outcomes in 1,136 singleton pregnancies conceived after programmed frozen embryo transfer (FET) compared with natural cycle FET」
Asserhøj LL.,et al. Fertil Steril. 2021
こちらはデンマークの論文で、2006年1月から2014年12月にFETを実施し単胎を出産した1136例を対象としております。ホルモン補充周期でFETした357例と自然周期でFETした779例の産科合併症 (妊娠高血圧症候群、前置胎盤、早期胎盤剥離)と分娩時の異常 (誘発分娩、帝王切開、分娩時の出血多量)、出生児体重、分娩週数を比較しております。
ホルモン補充周期は自然周期に比べて妊娠高血圧症候群、誘発分娩、分娩時の出血多量、帝王切開のリスクが増加するという結果となりました。また、出生児に関してもホルモン補充周期は自然周期に比べて出生体重が4500gを超える巨大児のリスクも増加するという結果となりました。
[まとめ]
ホルモン補充周期は自然周期に比べて、妊娠高血圧症候群といった産科合併症や帝王切開、分娩時の出血多量のリスクを増加させるなど、周産期予後に影響を与える可能性があると述べられています。
以前のコラムでも紹介しましたが、日本と中国の論文でもホルモン補充周期は自然周期に比べ、妊娠高血圧症候群のリスクが増加するという報告があります。(凍結融解胚移植と周産期合併症 | 不妊治療 京野アートクリニック高輪(東京 港区 品川) (ivf-kyono.com))
ホルモン補充周期は自然周期、新鮮胚移植、自然妊娠と比べると胎盤の形態学的構造が異なると言われており、その結果分娩時の出血多量のリスクが増加する可能性があります。また、ホルモン補充周期では黄体ができない状態 (P4製剤による黄体補充)で妊娠するため、血管内皮増殖因子などの血管作動性ホルモンが循環していないことから、妊娠高血圧症候群のリスクへとつながるのではないかと考察されておりました。
多胎妊娠、40歳以上の高齢、BMI>35、PCOSは妊娠高血圧症候群のリスク因子であるといわれており、FETのための子宮内膜調整法を選択する際はこれらを考慮したうえで計画を立てていく必要があります。当院では自然周期、ホルモン補充周期でのFETの他に、レトロゾールやFSH製剤、HMG製剤を使用した排卵誘発周期でのFETを行っております。ご自身の治療の際、どの方法でFETを計画立てるかは既往歴や不妊原因、血中のホルモン値、過去の治療歴などをもとに医師が判断いたします。
疑問点やご不安な点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。
当院での治療後に安心して妊娠生活、出産を迎えられるよう、今後も皆様にとってより安全な治療を提供できるように努めてまいります。
論文URL:https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(20)32553-X/fulltext
京野アートクリニック仙台
培養部 佐々木千紗
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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