学会報告 2024.09.30
2024年8月22日、23日に行われた第42回日本受精着床学会に参加してまいりました。
今回、わたしは人工知能(AI)を用いた胚(受精卵)にスコアを付けるシステムである“iDAScore®”についての学会発表を行いました。
iDAScore®については論文紹介という形でご紹介しております。
人工知能を用いた胚スコアリングシステムiDAScore®について
胚のクオリティを評価する際、「形態(見た目)」と「発生動態(発育過程)」の2点を用いて総合的に評価をします。胚のクオリティが高いほど高妊娠率であるのが一般的です。
たとえば胚盤胞期の胚であれば、拡張ステージ、将来胎児になる細胞であるICM、将来胎盤の一部になる細胞であるTEの3つを評価するGardner分類が形態を評価する手法として頻用されています。
発生動態というのは、細胞分裂の速度が適切か、異常な分割をしていないかなど複数のポイントにおいて評価するものです。
形態評価は、評価者の主観が入るので客観性が乏しくなる可能性があります。また発生動態の評価は非常に労力のかかるもので、全ての発育過程を評価するにはマンパワーが必要となります。
AIを用いて妊娠の有無が判明している胚の形態や発生動態を学習させ、妊娠の可能性の高い胚ほど高いスコアが付けられる全自動の胚評価システム:iDAScoreⓇが開発されました。
iDAScoreⓇはEmbryoScopeというタイムラプスインキュベーターに搭載されているもので、京野アートクリニック3施設(盛岡、仙台、高輪)全てで使用しており、iDAScoreⓇも3施設で運用されております。
※タイムラプスは保険で採卵を行う患者さまにおかれましては、先進医療としてオプションで使用していただくようになっております。
仙台院から2022年にiDAScoreⓇの有用性を学会報告しましたが、今回はバージョンが新しくなったので再度iDAScoreⓇの妊娠予測性能について評価いたしました。
2022年の報告: タイムラプスインキュベーターに搭載された人工知能は有用か?
39歳以下の方から得られた胚盤胞を対象とし、新旧バージョン(旧:v1.0モデル、新:v2.0モデル)での検討結果を以下にお示しいたします。
図1. スコアリングの傾向
左側のグラフで示した旧モデル(v1.0)では8点以上にスコアが偏っていましたが、右側のグラフの新モデル(v2.0)では幅広くスコアが付与されていることが分かりました。
図2. 妊娠した胚と妊娠しなかった胚とのスコアの比較
新旧モデルともに、妊娠した胚の方が高スコアとなっておりました。
右側のグラフに示した新モデル(v2.0)の方が妊娠した胚と妊娠しなかった胚とのスコアの差が大きいことが分かりました。
図3.新モデルにおける形態評価とiDAScoreⓇを組み合わせた際の妊娠継続率
棒グラフはそれぞれ形態評価ごとの妊娠継続率を示しています。横軸はスコアを低いものから順に4群に分け、右側に行くほど良いスコア帯となっています。
新モデルのみの結果ですが、形態評価によらずスコアが高ければ高妊娠率であることが分かりました。
低い形態評価の受精卵でも、iDAScoreⓇが高ければ妊娠継続率も高いことを示しています。
しかし、最良好胚である4AAの胚ではどのスコア帯でも安定した妊娠継続率を示しました。
結論として、
AIの登場によって胚培養の領域も大きく変化していくことが予想されます。
AIをはじめとする最新のテクノロジーを活用することで、より良い生殖補助医療が提供できる可能性がありますが、テクノロジーを活用する医療者側のリテラシーが必要です。
ただ使用するのではなく、どんな仕組みのものなのか?本当に期待される効果が得られるのか?といった疑問を持ち、それを理解し解決するために研究することがとても重要と考えています。
京野アートクリニックでは長年の経験に基づく質の高い医療をさらに高めていけるよう、今後も研究を継続してまいります。
また、今回ご紹介したiDAScore®やタイムラプスについてお聞きしたいことがございましたらスタッフにお声がけください。
仙台培養部
宮本 若葉
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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