論文紹介 2022.09.26
高輪院副院長の橋本朋子です。
今回も卵子凍結について紹介していきたいと思います。
これまでの卵子凍結に関する紹介は以下から確認いただけます。
社会的卵子凍結の有効性~when is the best timing?
卵子凍結の成績について -融解後の妊娠予後の調査-
卵子凍結を行う意味 -費用対効果に関する検証-
卵子凍結に関する情報は多くの方に届き始めていることと思いますが、はたして、自分が何歳の時に行うのがベストなのか、何歳までに行えば良いのか、という点は皆さんもとても気になるポイントではないかと思います。
単純に妊娠率ということであれば、若いほど妊娠率は高くなり、一度の採卵で得られる卵子の数も多くなることが予想されますが、実際にそれを利用するかどうかも含めた実態調査、費用対効果の比較はなかなか日本ではまだできていません。
この点については、海外の方が進んでいますね。
先日の受精着床学会でも紹介したアメリカの論文を紹介したいと思います。
この論文は、社会的卵子凍結の最適実施時期に関する米国からの2015年の論文です。
社会的卵子凍結vs No actionの2群の生児獲得の可能性と費用対効果を類推したもので、さらに、モデルA(婚姻あり) vs モデルB(婚姻なし)での比較も行い、生児獲得の確率を調査しました。
結果によると、37歳で凍結保存するのが最も有益と推測(生産確率 社会的卵子凍結51.6% vs No action 21.9%で、この年齢が最も卵子凍結保存による貢献度が高い)ということを報告しています。
また、34歳未満の凍結保存は、生産確率は高いが卵子凍結による貢献度が低くなるとも報告しています。これは、当院でもあるケースですが、凍結保存したあとに自然妊娠されたり、他の不妊治療をその時点の年齢で行って妊娠に至るケースも存在することが関係しているのではないかと推測します。
また、卵子利用の前提条件として婚姻あり(require marriage before attempting pregnancy)の方が、婚姻なし(do not require marriage before attempting pregnancy)よりも生産確率が低くなったことを報告しており、日本では議論が進んでいませんが、選択的シングルマザーという方がアメリカやフランスなどでは多くいらっしゃいます。そういう社会的な背景も関係してくるんですね。
また、一般的に、より高齢になるほど結婚の機会も減るものであり、卵子凍結して結婚の機会を待つということには矛盾があるとこの著者らは結論付けています。
女性にとっては厳しい意見だとは思いますが、一理ありとも思います。
日本においても、女性が卵子凍結して利用する際の条件的ハードルがもっと下がると、少子化にも貢献しうると思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか。
京野アートクリニック高輪
副院長 橋本朋子
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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