コラム 2025.06.19
こんにちは。培養部の奥山です。
当院では、タイムラプスインキュベーターをはじめ、大規模自然言語モデル(ChatGPTなど)やAIエージェントを活用し、実務へのAI実装を積極的に進めております。その結果、胚培養士が卵子・精子・胚と向き合う時間が明らかに増加し、より集中できる環境が整ってまいりました。
また、培養室スタッフは毎月、各手技に関するトレーニングを実施しており、日々の研鑽に努めています。
先日のコラムでも紹介いたしましたが、読売新聞社の
[AI近未来]第3部 功罪の間で<3>誕生から終末まで選別
にて、当院の培養室が取材を受けました。
今回、メインで取り上げていただいたのは、タイムラプス型インキュベーターに搭載されている iDAScore® です。これは、AIが胚のランク付けを行う機能です。
詳細や関連する研究については、下記のコラムをご参照ください。
国内外の研究でも指摘されているように、AIによる計算アルゴリズムは直感的に理解しづらい部分があり、また、いわゆる“ハルシネーション”(AIが事実と異なる出力をする現象)のリスクも完全には排除できません。そのため、人の目を完全に排して判断を下すことは現状では困難です。不安を感じる方も少なくないと思います。
私たちはAIをあくまで「ツールのひとつ」として捉えておりますが、最適な胚選択を実現するための研究やその実装方法の検討は、非常に将来性のある取り組みであると考えております。
このような現状に触れた論文を一部ご紹介します。
Giovanni Coticchio , Danilo Cimadomo, Laura Rienzi.
Do we still need embryologists?
Reprod Biomed Online. 2025;50:104790.
胚培養士はいつまで必要か?という当時者としては穏やかではない論文ですが
AIの技術発展によって自動化が進んでおり我々の在り方がどう変化するのか?
という様々な最新論文をまとめた文献になります。
「胚培養士はいつまで必要か?」という、当事者としては穏やかではないタイトルの論文ですが、AI技術の発展により自動化が進む中、我々の存在意義が今後どのように変化していくのかを、多くの最新文献をもとに考察しています。
もちろん、自動化と一口に言っても、それに伴う機械化のコストやメンテナンスの負担、そして先述のハルシネーションなどのリスクがあり、完全に人の手から離すのは簡単ではありません。また、仮に一定レベルまで自動化が達成されたとしても、技術や結果をマネジメントする存在として、胚培養士は引き続き不可欠であると述べられています。
正直なところ、現時点では近い将来さえも予測するのが難しい時代になっています。だからこそ、どのような未来に進むとしても、私たちは次の2点を重視し、培養室の活動を継続しております:
そして、その傍らにAIによるサポートを取り入れることで、よりよい未来を実現していけると信じております。
高輪培養部主任 奥山
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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