体外受精における卵巣刺激とは、排卵誘発剤を仕様して卵胞(卵巣にある、卵子が入っている袋)を複数発育させ、複数の卵子を得る目的で行われます。卵巣刺激は、注射の量や種類に着目して分類すると、「刺激周期」「低刺激」の2つに分類されます。
そのほかに、卵巣刺激を行わない「自然周期」「未成熟卵体外培養」などの方法があります。
当院では、年齢や卵巣予備能に応じて、患者さんに最適な卵巣刺激法を提案いたしますが、原則として、卵巣刺激法を行い、一度の採卵で多くの卵子を得る方法を推奨しています。
刺激周期とは、一般的に、月経時から採卵までの間、毎日、排卵誘発剤の注射を行う方法です。
(これに対して「低刺激」という方法があり、これは、内服薬を併用し、これより注射の回数や量が少ない方法です)
採卵の時に、採卵針で卵胞を穿刺し卵子を採取した場合、卵胞1個あたり成熟卵が採取される可能性は70~80%程度、成熟卵が得られた場合、受精率は70~80%程度、その後の分割も100%ではなく質も様々です。
受精してから5日目まで育った胚盤胞の状態から移植をした場合(凍結融解胚移植)、およそ妊娠率は30-40%といわれています。
このように並べるとわかるのですが、1度の妊娠に必要な卵子の数は1個ではありません。
海外のデータでは、最も妊娠率が高まるのは一度の採卵で採卵数が15個採れた時と考えられています。
(引用元:Sentara et al.Hum Reprod 2011;26:1768-1774 (UK)
分類 | アンタゴニスト法 ロング法 ショート法 |
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メリット | 複数の卵子を得ることによって、よい受精卵が含まれる可能性も高まること 複数の凍結胚を得られる可能性が上がることなど |
デメリット | 毎日注射を打つことによる身体的・心理的・経済的負担 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の可能性 |
重症OHSSにならないよう十分注意して治療を行いますので、重症OHSSの頻度は高くありませんが、100%発症を防ぐことは不可能であり、入院加療が必要になったり、血栓症を併発したりすることも考えられます。
低刺激とは、当院の場合、内服の排卵誘発剤を併用することで、月経時からしばらくの間、排卵誘発剤の注射を行わないか、行っても1日おきであるなど、注射の回数を減らした卵巣刺激方法です。内服薬の種類や注射の方法には多くのバリエーションがあります。
分類 | マイルド |
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メリット | 注射の回数が少ないため、身体的・心理的・経済的負担が軽されること 卵巣過剰刺激症候群のリスクが比較的低いことなど |
デメリット | 1回の採卵が得られる卵子の数が刺激周期と比べて少ない可能性があること 刺激周期と比べて再度採卵が必要となる可能性がやや高いことなど |
自然周期よりは採取できる卵子が多いため、自然周期よりは受精卵が得られる可能性があり、リスク、確実性において、刺激周期と自然周期の中間的な方法です。
クロミフェン(セロフェン)周期では新鮮胚移植を計画した周期に子宮内膜が薄く、新鮮胚移植を見送り全ての受精卵を凍結せざるを得ないことがあります。この場合、その後の胚の状態によっては、凍結できず、1個も移植できない可能性も考えられます。
「ホルモンバランスがよくない、卵巣予備能力が低いなどで、卵巣刺激をしても複数の卵子が採取できる見込みがない場合」「刺激周期や低刺激で妊娠しなかった場合」などが主な適応ですが、基本的には自然排卵があれば、どなたにでも行える方法です。
分類 | ― |
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メリット | ほとんど注射などを行わないので身体的・経済的負担を最も軽減できること 毎月採卵できる点など |
デメリット | 卵胞が原則1個のため採卵しても卵子が採取できないリスクが他の方法よりも高いこと 妊娠しなかった場合には採卵からやり直しになってしまう(時間がかかる)こと |
受精卵ができ、胚移植ができれば、胚移植あたりの妊娠率は他の方法と遜色ありません。
月経不順のある多嚢胞性卵巣症候群の方に対して、卵巣刺激を行わないで採卵する方法です。自然排卵がある方(自然に卵胞が育つ方)は適応になりません。
通常は、卵巣内で成熟した卵子を採取して採卵当日に授精させますが、この方法では、卵巣内で成熟する前の未熟卵子を採取して、体外で1日培養し、成熟したものに対して、採卵翌日に授精させる点が違います。
分類 | ― |
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メリット | 卵巣刺激を行わないので、卵巣過剰刺激症候群の可能性がないこと 基本的に排卵誘発剤の注射を行わないため身体的・心理的・経済的負担が軽減されること (※採卵36時間前の注射はあります) |
デメリット | 通常の体外受精・顕微授精に比べて胚移植あたりの妊娠率が低いこと |
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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