”精子又は卵子の提供による体外受精に関するJISARTガイドライン”を読む
卵子提供・精子提供を用いた治療は、希望された方が皆さん実施できるわけではなく、細かな条件や倫理委員会における審議で承認された後にはじめて実施可能となるものです。
そのため、必ずしも患者様のご希望に沿えない場合もあるということをご理解くださいますようお願いいたします。
卵子提供による体外受精を受ける者(被提供者=レシピエント)は、第三者より卵子の提供を受けなければ妊娠できないと医学的理由が認められている必要があります。
卵子提供を受けることが出来る妻の年齢(当院独自の基準)
当院では、妊娠・出産される母体の健康を考慮し、「卵子提供による体外受精を受けることが出来る者」の条件として「40歳未満の方」とさせていただきます。
卵子提供者(=ドナー)の年齢制限
加齢により妊娠率の低下・流産率の上昇が報告されておりますことから提供者の年齢が現時点で40歳以上の方の場合にはお受け付けすることができません。
現時点で38-39歳の女性の場合に関しては、申請手続き期間は半年から1年以上となることもございますので、間に合わないという状況になることも考えられます。
精子提供を受けて体外受精を行う場合には、少なくとも被提供者=レシピエントは無精子症という状態であることが想定されます。
医学的にどうしても精子が得られない状態であり、提供を受ける以外にお子さんを得る方法がないということです。
先天性の方もいらっしゃいますし、たとえば若くしてがんに罹患され、抗がん剤などの治療の副作用によって、精子が失われた方なども含まれます。
上記にあてはまる場合も、「加齢により妊娠できない夫婦ではないこと」という基準がございます。
精子提供を受けることが出来る夫婦の年齢(当院独自の基準)
被提供者の年齢についてJISARTガイドラインには記載はありませんが、当院では、精子提供者の年齢制限に則り、「55歳未満」とさせていただいております。55歳未満でも医学的理由がなく単に「加齢のために精子が得られない」という理由では対象外となります。
また、当院では、母体の安全を考慮し、精子提供を受ける妻の年齢も卵子提供同様、「40歳未満」とさせていただいております。
精子ドナーの年齢制限
提供者に関しては、感染症の検査に加え、遺伝的な検査を受けていただくことが必須です。年齢は現時点で55歳未満と規定されています。
JISART非配偶者間体外受精では、被提供者夫婦・提供者(夫婦)だけでなく、生まれてくる子の福祉を第一に考えてガイドラインが作られております。そのため、提供者夫妻・被提供者(夫妻)には、非配偶者間の治療について、また生まれてくる子どもの福祉について、時間をかけて考えていただくことになります。
生まれた子どもの立場
精子又は卵子の提供による体外受精によって生まれた子の民法上の親子関係の位置づけについては、令和2年12月に制定された『生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律』により、提供者から提供された精子又は卵子で出生した子の母は被提供者夫婦の妻になり、また、被提供者夫婦の夫が子の父となります。
出自を知る権利には様々な規定が設けられています。
(JISARTガイドラインより一部抜粋)
提供による生殖補助医療により生まれた子には、自分の出自(血縁上の父又は母である提供者に関する事項)を知る権利が認められます。
提供された精子は又は卵子による生殖補助医療により生まれた子が出自を知る権利を行使するために、親が子に対して当該子が提供された精子又は卵子による生殖補助医療により生まれた子であることを告知することが必要です。
提供された精子又は卵子による生殖補助医療により生まれた子であって、15歳以上の者は、提供者に関する情報のうち、開示を受けたい情報について、氏名、住所等、提供者を特定できる内容を含め、その開示を実施医療施設に対して請求することができ、実施医療施設は子から請求があった場合には、子に対してこれを開示します。
子が精子又は卵子の提供による体外受精によって生まれた子である旨を当該子に告知すること及び提供者に関する情報を子に開示することによって子の精神状態等に影響する可能性があります。
生まれた子の福祉、及び、提供者の子の福祉を考慮し、提供者の子は生まれた子と、遺伝的に「父親又は母親の遺伝的因子を共有する兄弟姉妹」となるので、提供者の子にも告知する必要があります。告知の方法としては、提供者夫婦がその子に対して、幼少期かつ早期に、可能な限り、提供者夫婦および被提供者夫婦の十分な連携のもとに告知することが望まれます。現在提供者に子がいない場合でも、子どもが生まれたら告知することが望まれます。
提供された精子又は卵子による生殖補助医療により生まれた子であって、15歳以上の者は、自己が結婚を希望した場合に近親婚とならないことの確認を実施医療施設に対して求めることができます。同様に、提供者の子も近親婚とならないことの確認を生まれた子の実施医療施設に対して求めることができます。
提供者が独身である場合、将来の結婚(再婚を含みます)に際しては、配偶者に対して、提供の事実を告知することが望まれます。
上記は、法律で強制力をもって行うものではありません。しかし、被提供者ご夫婦、提供者ご夫婦、医療機関やJISART、生まれてくる子ども、提供者の子どもを含めて、連続的に信頼関係を保ち、協力して関係者の幸福や福祉を守るために関わり合っていく必要があります。
そのため、以下の例に示しますように、事前の熟慮期間や長期のフォローアップ期間も含めて、お互いに信頼関係を築けるかどうかも見定めながら、治療を進めていく必要があります。
実際に進む流れのイメージは以下のようなものです。(卵子提供の場合)
問い合わせフォームに入力
ページ下部の問合せボタンを押して必要事項をご入力ください。
当院担当者から資料を送付いたします。
事前ヒアリングフォーム入力
資料をお読みいただいて、治療を希望される場合、資料に記載の事前ヒアリングフォームにご入力いただきます。
院内で検討の上、1~2週間で結果をメールでご連絡いたします。
スタッフとの面談
ガイドラインならびに当院の基準の満たしている可能性があると院内で判断しましたら、
レシピエント夫婦・ドナー(夫婦)それぞれ当院スタッフとの面談を受けていただきます。
事前検査
ドナーレおよびシピエントの健康と安全を守るため、事前検査を受けていただきます。検査項目は、通常の婦人科所見(ホルモン検査、超音波検査など)、ABO・Rh式血液型、血清反応、(梅毒、B型肝炎ウイルスs抗原、C型肝炎ウイルス抗体、HIV抗体、クラミジア抗体)などです。事前検査の結果によっては、卵子提供を断念していただくこともあります。
インフォームドコンセント(説明)
定められた項目について、被提供者夫婦、提供者(夫婦)がそれぞれ医師やスタッフから十分な説明を受けた上で、熟慮期間に進みます。
熟慮期間中の心理カウンセリング(必要に応じて診察も)
心理カウンセリングや診察を受けたものの様々な理由で実施に至らないケースもございますが、その際もカウンセリングや診察の費用は発生いたします。
インフォームドコンセント(説明と同意)
最低3ヶ月間の熟慮期間を経て、再度、被提供者夫婦、提供者(夫婦)がそれぞれ医師やスタッフから十分な説明を受け、最終的な意思確認を行います。
倫理委員会申請
治療の適否や留意点の審査等を細かく行います。実施にあたっては、様々な分野の専門家が倫理委員として参加しており、単に医学的な目線だけでなく、お子さんの福祉のことなども含めて、多面的な審査を行います(当院の場合はJISARTの倫理委員会に委託しています)
再・感染症検査
倫理委員会の承認後、原則として、採卵して6ヶ月以降に、再度感染症検査(B型肝炎ウイルスs抗原、C型肝炎ウイルス抗体、HIV抗体)を受けていただきます。感染症の中には、そのウイルスに感染していても(抗体を持っていても)、感染後6ヶ月間、検査結果で陰性となる(Window Period)場合があるためです。そのため、採卵を行った日から6ヶ月の期間をあけて再度検査をうけていただき、採取された卵子が感染症におかされていないということを確認する必要があります。
ここまでが事前準備となり、全てが揃えば、採卵-胚移植という風に進んでいきます。
こうして記載をしてしまうと案外簡易に見えてしまうかと思いますが、実際には非常に狭き門でもありますし、当事者の皆さんでよくよく検討された上で、熟慮期間の後に断念されるという方も多くおられます。
この治療の是非は社会的な捉え方によって、今後も意味合いを変えてくるものと思いますので、あくまで現時点での取り決め(令和5年9月時点)とご理解ください。
本治療に関するお問い合わせは以下からお願いいたします
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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7:30〜16:30 (最終予約 15:00) |
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